医師 転職が大々的に変わるのは今回が初めて?

ああ、考えただけでも恐ろしい。 定年制、つまり年齢を理由にクビになった場合はどうか。
定年に達した従業員にしてみれば、本当はもっと働きたかった、まだまだやれるんだから辞めたくなかった、のかもしれない。 そのようなケースであれば、「能力」でクビになる場合同様、従業員はやっぱり納得できない思いにかられることになる。

しかし「能力」の場合との最大の違いは、自分が60歳の定年年齢に達したヽそのこと自体を否定することはできないヽという点である。 「能力」によってクビになった場合は、「私はまだ能力があります、したがって、クビにされるのはおかしいです」と抗議することになるが、「年齢」が理由の定年制の場合は、「私はまだ60歳ではありません、したがって、クビにされるのはおかしいです」とは言えない。
いや言えるかもしれないが、それは会社のミスでまだ59歳の人に定年退職が通知されてしまった場合のみである。 「私は確かに60歳ですが……でもクビになりたくないです……」言えるのはせいぜいこれくらいだ。
その従業員が60歳になったこと、この事実は動かしようがないし、本人も納得せざるを得ない。 要するに、定年制で会社を辞める場合には、「能力」でクビになる場合よりも、文句をつけられる範囲が限定されるのだ。
摩擦も混乱もその分少ないはずである。 年功的な日本だからこそそして、「能力」基準よりも「年齢」基準の方がまだ摩擦が少なくて済むのは、第6章でみたように、現在の日本が、先輩・後輩、年上・年下を重視する、年功的な社会だからである。
年齢を基準とする仕組みが社会のあらゆる局面に浸透している社会だからこそ、年齢を基準として会社を辞めさせられるのは(ホントはイヤだけど)まあしょうがないかな、と納得できてしまうのだ。 年齢による「割り切り」は人権問題だ、という社会なのであれば、定年年齢に到達したというだけで会社を辞めさせられるなんてことは到底納得できないだろう。
能力に基づいてクビかどうかを判断します、という仕組みの方がまだ受け入れられるに違いない。 また卵そういう社会なのであれば、「能力」の評価基準についてのコンセンサスも自ずと確立されていくに違いない。
しかし現在の日本はそういう社会ではない。 すでに触れたように、学校でも職場でも、地域でも家庭でも、年齢が上か下かが常に重視される社会なのだ。


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